昨日の続き

とりあえず典さんからのプレゼントを届けに行かなくては。
翔ちゃんも誘ったが「さっき会うたからもうええ」と断れたので、かつおさんと二人で綿子さんちへ行った。

綿子さんに荷物を渡し「典さんからやで」と伝えた。
そしてかつおさんが典さんに電話をかけ、綿子さんに代わった。
綿子さんはとても喜んで典さんにお礼を言っていた。
かつおさんと喋る時とは違う、高い声だ。
かつおさんは「よそ行きの声出してから」とブツブツ言っている。
綿子さんは「また帰って来てくれのぉ」と言っていた。
典さん、わたし達からもお願いします。
綿子さんが帰ってきてまだ数時間ですが、早くもギブしそうです。

電話が終わると、かつおさんが
「ばあさん、ウロウロしたらイカンやろが!こけたらどうするんや!」
と言った。

綿「ウロウロやしてないわ」

「ウソ言え畑の中に入っとったやろが」

綿「畑や行ってないわ」

「翔ちゃんが見たって言うとったぞ」

綿「おう、さっき翔ちゃんに会うたんや。初めかつおかと思うたら翔ちゃんやっての。嬉しかったんや!だからギュッってしたんや~」

満面の笑みだ。

「ほれみ、ウロウロしとったやないか」

綿「・・・・・」

「綿子さんが退院してくるのを待っとったら、遅いかなと思うて、見様見真似で植えてみたんや」

綿「きゅうりとトマトとなすととうもろこしが植わっとったな」

先週、苗を植えたばかりで、苗には肥料袋で覆いをしてあった。
真上から覗かないと何を植えてあるのか分からないのだ。
自ら畑に入ったと白状したようなものだ。

「ほれみ、畑に行っとるやないか。ほんで秀樹ちゃんとこ行って話したんやろが」

綿「秀樹ちゃん?会うてないぞ?」

きょとんとしている。本気で言っているようだ。

「ウソ言え!空マメ貰ったんやろが」

すると綿子さん「あっ!」と思いだしたようだ。

綿「空マメようけ貰ったんや。好子さん、半分持って帰って」

こっち来てと台所に連れていかれた。
話の辻褄が合わない事には考えが及ばないようだ。
全く気にしていない。
これぞ『痴呆』なのか?

「いや、わたしもかつさんも豆はあんまり好きでないんや。綿子さんが食べたらええがな」

綿「こんなにようけあるのに」

「そしたら炊いて冷凍したらええがな」

綿「そうしようか」

なんとか空マメは断ることが出来た。

「ところで」
綿子さんが切り出した。

綿「屋敷の田んぼは何か植えるんな?米でも....」

「何も植えんで。米は無理や。去年、担当の田んぼを8枚に減らしてもらったけど、それでもヒーヒー言うたからな。やっぱり会社勤めしとる間はようけは出来んわ。だからあそこは何も植えんで」

綿「まあな。仕事を持っとったら大変やわな。でも....」

そう言いかけたところでかつおさんがもの凄い剣幕で話に割って入ってきた。

「アホ言うな!!絶対、何も植えんからの!米や以ての外や!」

鬼の形相だ。

「いつまで口出しするんや!自分は出来んのやから言うな!」

綿子さんは口をへの字にして黙ってしまった。

かつおさんがブリブリ怒りながら去っていくと

綿「私、みどり整形にまだ荷物置いたままになっとんや。取ってこないかん」

「いやいや、今日と明日だけのお試し帰宅やから、明日の夕方にはみどり整形に戻るんやで。荷物は置いたままでええんやで」

綿「えっ⁉そうなん?」

聞きつけたかつおさんがすっ飛んできて

「何回も言うとるやろが!!今日はお試しや!!」

綿「ほうな」

やれやれ、以前にもましてボケっぷりがヤバいじゃないか。
などと自供しており


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