ひき続き27日のこと

夕方、綿子さんがやって来た。
お皿を返しに来たそうだ。
先日、スイカを持って行った時のだ。
ま、それは口実で本当はかつおさんに会いに来たようだ。
あいにくかつおさんは田んぼへ行っていて留守だった。
綿子さんは明日の盆業のことを話し始めた。

綿「明日はお寺さんが来るんやけど、かつおが全部してくれるって言うとったんや」

「そうやで。かつおさんが準備も応対もするから綿子さんはデイサービスに行ったらええんやで」

綿「そうやがな。向こうの人にもそう言われたんや。今日、かつおが私が行っとる所までわざわざ説明しに来てくれたんや」

「いや、今日は茂造さんの誕生日やから、いぶきの森へケーキを届けに行っとったんや。ついでに寄ったんやがな」

綿「いや~あの子がそこまでしてくれるとは~」

実は8月からの新しい保険証が届いたので一度診せに行く必要があり立ち寄ることにしていた。
けど『かつおがわざわざ説明しに来てくれた』と感激しているようなので、これ以上言うのはやめておこう。

「とにかく明日はデイサービスに行ったらええからな」

綿「あそこに行っとったらいろんな人と喋れるしな。人の話を聞くだけでも楽しいんや」

すっかりデイが楽しみになっている。
良かった、良かった。

綿「かつおがお寺さんのことはわしがやってやる言うてくれてホンマに良かったわ~」

とにかく嬉しそうだ。

「そうや。今のうちにちょっと準備しときたいから、今から綿子さんちに行くわ」

綿「そうな」

二人で綿子さんちに向かった。
綿子さんちでお寺さんにお茶を出すためのガラスのコップと夏用の茶たくとお盆を探し出した。
そしてもちろん洗い直しておいた。
それとお布施をのせる小さいお盆も探す。
お茶セットは以前片付けたところにあったのですぐ見つかったが、お布施用の小さいお盆は元の場所に無い。
見つけるのに手間取ったが、何とか見つかった。
それから仏壇の前の電子線香と電子ろうそくを片付け、本来の線香立てなどを並べておいた。
花とお供えは明日すぐにあげられるようにうちで準備している。
綿子さんちはとにかく暑いので今あげるわけにはいかないのだ。
とにかく今日できることは全部やっておいた。
これで明日、かつおさんはバッチリお寺さんを迎えられるはず。

「これで明日はバッチリやと思うわ。かつおさんもここまで用意しといたら大丈夫やろ」

綿「ほんまにかつおがお寺さんのことはわしがやるって言うてくれて。施設にまでわざわざ来て説明してくれてな」

それ何回も聞いたで。

「茂造さんの所に行くついでもあったからな。茂造さん誕生日やからケーキを持って行ったんや。甘い物好きやろ、むっちゃ喜んだんやと。元気そうやったってかつおさんが言うとったで」

綿「わたしも今日じいさんの誕生日やからお金でも持って行こうかと思うたんやけど行けんからなぁ」

「いやいや、お金は持って行ったらいかんのやで。それに使うとこ無いしな」

綿「もう腰が痛うてどこにも行けんのや」

茂造さんの誕生日を祝う気持ちなんか全然無かったやろ。
昨日も「明日は茂造さんの誕生日やな」って言うたら、しばらく間があいて「そうやけど行けんしな」って言うっとったしな。
完全に頭に無かったやろ。
この間のお神楽の時はしつこいくらい連れて行けって言うとったけど、茂造さんの所には連れて行ってとは言わへんやん。
取り繕ってもその気がないことはバレバレやで。

かつおさんもそんな綿子さんの様子を見て
「わしも年をとったらよっちゃんにあんな風に言われるんやろか?入所しても会いに来てくれんようになるんかなぁ。ハルちゃんが「お父さんとこ連れてってあげようか」って言うても「ええわ」って言うんやろのぉ。淋しいのぉ」
と言っている。
まだそうと決まった訳じゃないやん。
日ごろの行い次第やん。
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