10月14日 土曜日

わたしはいつものように午前中は実家の買い物へ、かつおさんはさくら苑といぶきの森へ9月分の利用料を支払いに行った。
いぶきの森には午後から衣替えに行くからその時に支払えればいいのだが、土曜日は午前中しか事務員さんがいらっしゃらないので昼までに行かなければならない。
振込対応もしていないので二度手間だが仕方ない。

で、いぶきの森で支払いをしていた時のこと。
スタッフさんから「今日、衣替えにいらっしゃるんですよね。そのときに、茂造さんを外に散歩に連れて行ってあげてください」と頼まれたそうだ。
『家に帰りたい病』もずい分良くなっているので、家族との交流も大事なのだそうだ。

「それ、わたしも行って大丈夫?」

「大丈夫やろ」

「また、綿子さんと間違って騒いだりせんやろか?」

「さあ?なんとかなるやろ。一緒に来てよ」

不安を抱えながらいぶきの森へ向かった。

1時半の約束で、5分前に着いたのだが、すでにロビーにタンスが運ばれてきていた。
さあ、早速取り掛かろうと思っていたら、階段から茂造さんが降りてくるのが見えた。
両脇にスタッフさんが付いている。
えっ?どういうこと?
茂造さんは散歩に行く気マンマンで現れた。
てっきり衣替えを終わらせてから散歩に行くのだとばかり思っていたのだが違っていたのだ。
そこでかつおさんが茂造さんと散歩に、わたしが衣替えをする事にした。

せっせと夏物を取り出し、棚を拭いているとスタッフさんに話しかけられた。

ス「ありがとうございます。ところで茂造さんをたまには家に連れて帰ってあげて欲しいんですが、どうでしょうか?一泊とか」

「えっ?外泊ですか?いや~それはちょっと難しいと思います。おしっこも出なくてバッグを下げているようですし、なにかトラブルがあっても対処できないんで。それに綿子さんが嫌がると思うんです」

ス「綿子さんねぇ」

いぶきの森も綿子さんがデイサービスにで通うさくら苑も佐藤病院が経営していて隣接している。
いぶきの森スタッフさんもさくら苑の利用者の事もある程度は分かるようだ。
それに綿子さんはこのいぶきの森でショートステイをしたこともあるので知っているようだ。

「綿子さんは茂造さんが入所してせいせいしているようなんです。一人の生活を満喫してイキイキしてまして。ここ3カ月で3キロも太りましたし。今まで茂造さんのことが嫌で仕方なかったみたいで、今日も一緒に行く?って声をかけたんですが「いや、ええ」ってキッパリ断られたんです」

ス「あら~」

「そんな感じなので家に連れて帰っても面倒は見ないと思うんです。でもわたしとしては以前から連れて帰ってあげたいなとは思ってたんです。なので、泊りではなく外出じゃダメですかね?午前中に連れて帰ってお昼を食べて、夕方こちらに送ってくるぐらいなら何とかなるかなと思うんですが」

ス「ぜひそれでお願いします」

「でも一度家に連れて帰ったら、また『家に帰りたい病』がぶりかえして、こちらにご迷惑をおかけするんじゃないかと思って。それも気になってたんです」

ス「それは大丈夫です。多少、不安定になるかも知れませんが任せてください。その辺はご心配頂かなくても大丈夫ですから。それよりぜひお家へ連れて帰ってあげてください」

「分かりました。主人と相談して日程を決めますね。ほんとにねぇ、夫婦の仲が良かったら連れて帰るのも、もうちょっとスムーズに運ぶんでしょうけど。とにかく綿子さんの拒否が強いもので。なかなか難しくって」

ス「そうなんですね。仕方ないですね。では、外出だけでもご検討ください」

「分かりました。今後もどうぞよろしくお願いします」

スタッフさんは2階のフロアへ戻って行った。
すっかり話し込んでしまったので、衣替えが全く進んでいない。
早く入替えなくっちゃと思っていたら茂造さんたちが散歩から戻って来た。
衣替えが終わったらスタッフさんを呼び出すことになっていたがまだ終わっていない。
茂造さんをロビーのソファーに座らせ、急いで整理したのだが「もうベッドで寝たいが~」と言い出してしまった。
とりあえずスタッフさんを呼んだ。
急ピッチでタンスの整理をし、スタッフさんが2階から降りてくる前になんとか終わらせた。
ふぅ~~~。

忙しすぎてなんだか頭の中がグルグルする。
また一つ難問が降ってきた。
茂造さんを家に連れて帰るとして、いつ、何時から何時まで?
家に滞在中、どこでどう過ごしてもらう?
それに綿子さんにいつ、どう伝える?
実はかつおさんは茂造さんを連れて帰るのには後ろ向きだ。
きっと大変だという事が目に見えているからだろう。
けど、スタッフさんからお願いされたし、やはり少しでも自分の家で過ごさせてあげたいじゃないか。
かつおさんのお尻を叩いてしっかり決めていかないと。
それにしても忙しい....。
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