昨日の続き

そろそろかつおさんは額の傷を診てもらいに病院へ行かなければいけない。
カワハギの煮付けを半身残した。

「どしたん?」

「せっかくの美味い魚やのにゆっくり食べたいが。晩に取っとくんや」

普段、カワハギなんかめったに買わない。
だって高いもの。
今日は茂造さんのために張り込んだのだ。
かつおさんは半身が残ったお皿に大事そうにラップをかけていた。
それを見た茂造さんが

「それ要らんのやったらくれ!」

「要らんのと違うわ!これはわしのや!」

似た者親子だ(笑)

茂造さんは食後しばらくおしゃべりしていたが、ずっと座っているのもしんどいというのでベッドへ連れて行った。
やれやれ、やっと一息つける。
が、茂造さんは寝たわけではない。
ベッドで横になっただけで、また独り言が延々続いていた。
寝てないうちは気をつけないと起きてくるかも知れない。
一人で動いて転んだらいけないので注意が必要だ。
なんてったってこの家は段差が多いから。

洗い物をしていたら水の音で茂造さんの声がかき消されてしまうので、リビングで一息つくことにした。
リビングにいても扉を開けておけば茂造さんの声が聞こえてくる。
結局30分以上独り言が続いていたが、その後やっと静かになった。
今のうちに綿子さんの入院用品の準備だ。
持って行くもの全てに名前を付けないと。
今後、いぶきの森へ移っても大丈夫なようにしておこう。
いぶきの森では持ち物にちゃんと名前を付けておかないと、誰のものか分からなくなって困るそうだ。
痴呆の人が多いので、本人にも分からない。
その上、手癖の悪いボケ老人もいて、他人のタンスを勝手に開けて、取っていく人がいるそうだ。
なので普段タンスは壁に向けて置いてあるそうだ。
そんなわけで名前は必須なのだ。

続く
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