麦さんは帰る前にもう一度米さんの部屋を覗きに行った。
するとスタッフさんが米さんを車イスに移乗させていた。
スタッフさんは麦さんに気づくともう一度米さんに声をかけてくれた。

ス「米さん、妹さんが来てくれとるよ」

「ねえさん、起きたんな。元気にしとる?私、誰か分かる?」

米さんはしばらくして「わたこ」と答えた。
やっと少しだけ声が出た。

「綿子ちゃうで、私は麦や」

米さんは少しだけにこっと笑ったように見えた。
けどそれ以降、やっぱり声を発することは無かった。
そして車イスで移動する米さんと一緒にデイルームに戻った。

「姉さん、元気でな。また来るわ」

茂造さんの部屋から出てきたかつおさんも米さんを見てびっくりしていた。
無表情で空を見ている。
ほんの3カ月でこうも進むのか。

帰りの車内で麦さんはまた涙ぐんでいた。

「姉さんはもう長くないかもしれんなぁ」

「いや~ビックリしたわ。あれではかっちゃん(米さんの娘)たちも会いに来るん辛いやろなぁ」

「でも綿ちゃんと茂造さんはまだまだ長生きしそうや」

「勘弁して~」

同じ施設に入所している3人。
ほんと、三人三様、みんな全然違う。
綿子さんと米さんは4歳違い。
4年後には綿子さんも米さんのようになっているかもしれない。
親の介護はだんだん弱っていく姿を目の当たりにしなくてはならない。
まず良くなることはないのだから。
本当につらい仕事だ。
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