昨日の続き

「そしたら部屋へ行こうか」

大井「今、部屋は暑いと思います。この廊下の突きあたりでお話されるといいですよ」

部屋を覗くと窓際の茂造さんのベッドに日が射し込んでいた。
カーテンはあるが薄いので大井さんの言うとおり暑いだろう。
廊下の突きあたりにはベンチが置いてあってちょっとした談話スペースになっていた。

「そしたらあっち行こうか」

「しんどいが。わしここにおるわ」

困ったなぁ。
ここじゃおやつを食べさせられない。
他の入所者さんが大勢いるもの。

大井「茂造さん、あっち行こうで。あっち行ったらなんかええもん食べさせてくれるって」

耳元で小声でささやいた。

「わし、いらん!なんも食べんでええ!動きとうない」

ええっ!?
あの食欲モンスターの茂造さんが食べる事より動かないことを選ぶとは!

大井「そんなこと言わんと。せっかくみんな来てくれたのに」

か「そうやが、じいさんあっち行こう」

茂造さんは渋々立ち上がった。
廊下の突きあたりのスペースまで結構距離がある。

大井「大丈夫。このくらい全然余裕で歩けます」

茂造さんは手すりを持ちながらゆっくり歩いた。
こうやって多少は歩かさないといけないのかもね。

ゆっくりと進み廊下の突きあたりまでたどり着くとベンチに腰かけた。

「来てくれてありがとなぁ」

そして翔ちゃんを見て

「あんた誰かな?」

「翔平や」

「おお!翔平か!」

「そや。じいさんの孫や」

「これはゆうきやの。わしの孫や」

「違う、違う!ひ孫や!孫はこっちや」

翔ちゃんを差して言った。

「おお、そうか。こっちは誰や?」

「かつおや!」

「そしたらこっちが秀夫か?」

翔ちゃんを差して言う。
やっぱり分かっちゃいない。
翔ちゃんが言う通りだ。
ごめんね翔ちゃん。

けど『秀夫』が出てくるという事はまた小学生茂造に戻ったという事だろう。
なによりだ。

そして一番の目的のおやつタイムだ。
今日のおやつは柿だ。
あいかわらずフライングで「美味いのぉ!」と言う。
まだ食べてないやん!(笑)
秋の味覚

茂造さんの面会は明るくていい。
名前も存在も忘れられてるけど…。

帰り際も「会いに来てくれてありがとございました」と丁寧にお礼を言ってくれた。
また来るね。



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