そして2階の茂造さんのもとへ。
茂造さんはゆうくんがいなくても何も言わない。
特に気にならないようだ。
いたらいたで喜ぶんだろうけど。
この方がこちらは気が楽だ。

茂造さんはベッドで横になっていた。
かつおさんが声をかけると「メシか?」と言って起き上がった。

「ちゃう、ちゃう!メシはまだや!けどおやつ持って来たぞ」

「ほな座るわ」

そう言ってベッドに腰かけるように座った。

「はいどうぞ」

茂造さんのおやつはどら焼きとミルクティーだ。
あんまんは綿子さんの面会を終えてからだと冷めてしまうだろうと思ってやめた。

茂造さんは「美味いのぉ~」と言いながら喜んで食べてくれた。
そして「メシ食べたら家に帰れるんや」と言った。
「ほうな」
家に帰れるというのは茂造さんの妄想なので適当に相槌を打っておく。
いちいち訂正しても仕方ない。

けれど今日は何度も何度も「メシ食べたら家に帰れるんや!」と繰り返した。
見かねたのか隣のおじいさん(寝たきりで痰の吸引などが必要な方)のお世話をしていた大井さんが
言った。

大井「茂造さん、家に帰るのは検査してからやで。明日は日曜日でその次の日も祝日で休みやから火曜日やな。それまでは帰れんよ」

きっと火曜日に検査をする予定などないだろう。
とりあえずこの場を収めるための作り話だろうと思う。
茂造さんなら火曜日にはというか明日にはこの会話のことは忘れているだろうから。

茂造さんは「ほうな。分かりました」と素直に受け入れた。
そして

「ここにおったら金になるからのぉ。おらな損や!」

はぁ?
何を言い出したんだ?
お金になるだって?
そんな訳ないやん!
ん?
けどこれはラッキーかも。
ここに居る、いい理由になるじゃないか!

「そやなぁ」

すると大井さんが「ここにおってもお金にはならんよ」と言い出した。
ギャーやめてー!!
急いで違う話を振って誤魔化そうとした。
大井さんもすぐ理解してくれたようだ。

大井「そうや。ここにおったらええがな。家に帰ったらお金にならんからな」

ナイス!大井さん!

「そうや。家におったって1円にもならんからな。ここにおったらお金になるんや!」

そうだ!そうだ!
いいぞ!
そのまま素敵な勘違いのままでしっかりお金儲けしてください!

その後、そろそろ帰ろうとわたし達が立ち上がると茂造さんが御礼を言ってくれた。

「今日は美味しいまんじゅう食べさせてもろたし、美味しいコーヒーも飲んだし、ありがとなぁ」

どれもビミョーに違ってるんですけど(笑)
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