そして茂造さんのもとへ。
デイルームに茂造さんの姿はなかった。
ベッドで横になってブツブツ独り言を言っていた。

「そうや、あれ持って来てくれたんや。あれは大きなタイやった」

タイ?
魚の鯛のことかな?
なんだかよく分からないが他にも何かを貰った話をしていた。
一体いつの話だろう?
過去のことを突然思い出すのだろう。
それを口に出して一人でブツブツ言うのが茂造スタイルだ。
聞いていると結構面白い。
が、今日はゆっくり聞いている暇はない。
また今度だね。

で、今日は便汚染なし!
やったー!!
幅広テープのおかげかな?
とにかく良かった。

ウキウキでガラス扉を出たところで今度はバッタリ畑田マネージャーに会った。

畑「ちょうどよかった~。書類にサインを頂きたいんです。お願いできますか?」

「はい、わかりました」

土曜日に言ってたあれね。
今日わたしが来るだろうと用意して待ってたようだ。
そこへ草野マネージャーも通りかかり「あっ、綿子さんの書類にもサインください。急いで取ってきます」と階段を駆け上がって行った。
という事で二人分の書類にサインをしたのだった。

サインをしながら茂造さんと綿子さんの話になった。

畑「綿子さんは家に帰りたいって言わないの?」

草「う~~ん、帰りたい気持ちはあるとは思うんだけど息子さんに迷惑が掛かるからって感じかなぁ」

「家に帰っても一人ですからね。一人だと怖いみたいだし、ここなら仲良しさんも出来て楽しいみたいですし割と気に入っているようです。それに家でじっとしといてくれるならいいんですけど、とにかく動き回る人なので。それで転んで骨折して入院を繰り返すから周りが大変なんですよ。ここでも骨折したでしょ。つい体が動いてしまうんでしょうね。ここでなら骨折しても会社を休まなくて済むけど、これが家なら仕事を抜けて家に戻って、病院に連れて行って、入院させてって何度も休むことになってしまうから困るんですよ」

畑「しっかりしとるように見えてもやっぱりそうなんですねぇ」

「はい。とにかく畑に行ってゴゾゴゾするのが好きで。そういえばここのホームページに施設内の菜園で野菜作りが出来るって載ってましたよね。もし機会があれば綿子さんもお願いします」

※多分コロナの頃に外出禁止になって以降、この菜園はスタッフさんのみで世話をしている模様。ぜひ再開してほしいものだ。

「あっそうそう、部屋に一輪挿しを置いて花を飾ってもいいってお聞きしました。ありがとうございます。綿子さん喜ぶと思います」

草「あぁ聞きました。そういえば以前もそんな話をしてて、そのすぐ後に骨折しちゃってそれどころじゃなくなってましたものね。お花を飾るのいいと思います。4階の植木鉢の花のお世話もよくやってくれるんですよ」

「綿子さんちは昔、花農家だったそうなんです。わたしが嫁に来た頃にはとっくにやめてたから良くは知らないんですけど温室とかあったそうです」

草「それで花のことに詳しいのね」

畑「茂造さんもシクラメンがどうのこうのとかよく花の話をしてるわ」

「茂造さんは今、すっかり若い頃に戻ってますから温室があるものと思ってるようで、とうの昔に温室はつぶしてあるのに「温室つぶしたんか⁈誰がつぶしたんや⁈」って毎回言ってます(笑)」

畑「そうそう今日、茂造さん面白かったのよ~。「わしの子供は典夫とかつこや!」って」

好「えっ?典さんの名前覚えてたんですか?いや~珍しい。いつもは秀夫しか出てこないのに」

畑「いえ今日も初めは秀夫って言ってたのよ。だから「違うやろ。茂造さんの子供は典夫さんとかつおさんやろ」って言ったの。そしたら「お~そうやった」って。それから1時間くらいしたらなぜか典夫とかつこになってたのよ(笑)」

かつおさんいつの間にか娘になってるじゃん(笑)
それにしてもスタッフさんは家族の名前まで覚えてるのね。
大したもんだ。
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