昨日の続き

大井さんとの話を終えた頃には、帰りたい病のおばあさんはいなくなっていたので、いつも通りガラス扉から中へ入った。
茂造さんはデイルームにいたので「おやつ食べよう」と部屋に誘導した。

今日のおやつは上用饅頭だ。
かつおさんが「じいさんはこれが一番好きなんや」と選んだものだ。
しかし今日は茂造さんの口から「美味い!」は一度も出てこなかった。
なんで?
一番好きなんじゃ?
もしかしてかつおさんの思いこみ?

「これ食べたら温泉やろが」

温泉?
何を言い出したのか困惑していたら

「温泉言うてもほんまは風呂や」

あっ!
今日がお風呂の日だと勘違いしてるのね。

「今日は風呂の日と違うぞ」

「ほんまか?」

「ほんまや」

「ほんだら寝よか」

「そうせえ」

今日は「家に帰る」がなくあっさり。
いつもこうだといいのにな。

そうそうこの日、茂造さんの隣が空っぽになっていた。
またお亡くなりになったのかしらと思っていたら違っていた。
自宅に帰ったそうだ。
初めから家に帰る目的でリハビリを頑張っていたそうだ。
で、1ヶ月頑張ったので晴れて帰宅となったそうだ。
けれど隣の方は大型の車いすを使っていたし、耳も悪いようだしかなり介護度が高いように見えたんだけど。
少々リハビリをしたところで自力で歩けるとも思えないし、家の人は大変だろうなぁと思う。
わたしには絶対できないな。
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