善は急げ。
だけどとりあえず4階のスタッフさんに2階に行ってくると伝えなくては。
黙って連れ出すわけにはいかない。
廊下に出て近くにいたスタッフさんを呼び留め「綿子さんが茂造さんに会いたいって言ってるのでちょっと2階に連れて行ってきます」と伝えると「ええっ⁉」と驚いていた。
他のスタッフさんも「急にどうしたん?」と驚きを隠せない。
そりゃあ、みんなびっくりするよね。
さんざん「私がここに居ることはじいさんには言わないで」って言い続けていたものね。
それでもスタッフさん達は笑顔で「いってらっしゃい」と送り出してくれた。

2階に着くとこれまたスタッフさん達がみな驚いていた。
みんな二人がニアミスしないように気遣ってくれてたんだからそりやあ驚くよね。
畑田マネージャーは「茂造さんのいい刺激になるわ」と喜んでくれた。
じゃあ早速中へ。
とそこにリハビリスタッフさんが通りかかった。
なのでわたしは綿子さんの靴の件で4階スタッフとのやり取りを伝えておくことに。
2つ靴を持って来たので適当に使い分けてくださいとお願いしておいた。

わたしがリハビリスタッフさんと話している間に綿子さんとかつおさんと畑田マネージャーは先に茂造さんのもとへ。
茂造さんは部屋だったよう。
わたしが後を追いかけて部屋に行くと綿子さんは茂造さんのベッドのすぐ脇にいた。
遠くから見るだけじゃなかったんかい。
茂造さんはまだベッドで横になったままだった。

畑「茂造さん、起きようで。ほらみんなが会いに来てくれとるで」

声をかけているがなかなか起きないようだ。

「腹減ったが~、ご飯か?」

「ご飯はまだや。おやつ持って来たからそれ食べようで」

「ほな起きようか」

やはり食べ物でつられる男(笑)
今日のおやつはコンビニのあんまんだ。
入れ歯を入れると早速かぶりついた。

「これはええ!」

食べる事に集中して周りは目に入らないようだ。

畑「ほら奥さんが来てくれとるよ」

「ん?」

そう言ったきり後は反応なし。
食べ終わるまで待つしかないよね。
で、食べ終わった茂造さんに

畑「綿子さんが来てくれたで」

「違う!」

畑「違うことないわ。奥さんやがな」

「違う!」

「じいさん、違うことないぞ。綿ちゃんやが」

「こんなんと違う!」

おいおい!
せっかく会いに来てくれた奥さんに向かってそれはないやろ。
けど茂造さんはいくら言っても「違う」と言って信じない。
きっと茂造さんの中ではもっと若い頃の綿子さんの姿で記憶されているのだろう。
久々の再会は何とも言えないビミョーなものとなりました。
残念。
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