昨日の続き

「じいさん、来たぞ」

「おっ!迎えに来てくれたんか!ほな靴履くわ」

「いやいや、違う違う!家には帰らんぞ」

「なんでや!」

「おやつ持って来たから食べようや」

「ほうか、これ食べたら帰れるんやの」

何を言っても『帰る』につながる。
こりゃ大変だ。

とりあえずなだめてベッドに腰かけさせおやつを食べさせた。

「美味いのぉ~~」

おっ?ちょっと気がまぎれたか?
と思ったがそんなに甘くはなかった。
お菓子を食べ終わるとまた「家に帰るんや」と言い出した。
一応理由があるようだ。

「腹が痛いんや。山田病院に行って診てもらうんや」

「何を言うとんや。ここはお医者さんやないか。ここは佐藤さんやが。ここで診てくれるわ」

「いや、違う!」

「違わへんわ。それに土曜日やから山田病院はもう閉まっとるわ」

「そしたら澤田医院に行くわ」

澤田医院?
そんな病院とっくの昔に閉院しとるわ。
もうかれこれ40年以上も前のことだ。
やはり茂造さんは今、小学生か中学生だった時代の中にいるようだ。

「澤田医院はもうないから。それに今日は土曜日やから下戸も月曜にならな診てもらえんぞ。それまで寝てじっとしとき」

「いや、帰るんや。帰ったら治る」

今日はゆうくんのことは眼中にない。
ひたすら「家に帰る」ことに執着している。
すみません、スタッフさん達。
わたし達の手には負えません。

この後も何度も何度も「帰る!」、「それはムリ」、「なんでや!」を繰り返した。
「なんでや?」に答えたところで全く理解しないし、話がかみ合わないので理論的な説明は不要だ。
ひたすら「ムリ」で押し通すしかない。

やがて押し問答に疲れたのかようやく「もう寝るわ」と言った。

やったーー!!
やっと終わったーー!!
ふぅーーー。

茂造さんがベッドに寝転んだらすかさず引き上げた。

部屋から出ると

ス「ありがとうございました」

やりとりは全部聞こえていただろう。

「いえいえ、全然納得していないのでまた帰るって騒ぐんじゃないかな。申し訳ありません」

ス「お疲れ様でした」

ホント疲れたーーー!!
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