かつおさん家のボケボケ介護日記

はじめまして好子です。アラフィフの会社員です。 高齢の義両親・茂造さん(93歳)と綿子さん(91歳)の介護をする夫・かつおさんのサポートをしております。 ここにグチを吐き出しながら明るく頑張っていきたいと思います。

タグ:思い出した

一方、リビングチームは静かに食べていたそうだ。
茂造さんが喋りながら食事すると口からいっぱい飛んでくるからね。
話しかけたりしたくないよね。

茂造さん、今までなら完食していたんだけど今回は少し残していた。
やはり食が細くなってきているようだ。
でも十分な量は食べているけどね。

で、食べ終わると「わしもう寝るわ」と言いだした。
とここでかつおさん大事なことを思い出した。
典さんにお昼過ぎに電話するから待機しとけよと伝えていたのだ。

「じいさんちょっと待ってくれ」

急いで典さんにLINE電話をかけビデオ通話を始めたのだった。
良かった思い出して。

で、電話が終わりようやく奥の部屋で寝始めた。
寝てくれるとホッとする。

一方綿子さん達台所チームはまだまだお開きにはならない様子。
デザートにブドウと梨を出したらこれまた梅ちゃんが「義姉さんこれ美味しいで」と勧める。
「ほら皮はここに出しな」「はい、これで手をふきなよ」とかいがいしい。
で松男さんが顔をしかめる。
いつまで続くんだ。
いつもなら「もうそろそろ」と腰をあげる頃では?
だが二人とも立ち上がる気配がない。

そうこうしていると1時過ぎに麦さんがやって来た。
麦さんと梅ちゃんたちはほとんど面識がない。
が、梅ちゃんは「昔、ニゲタの家に行って泊めてもらったん今でも覚えとるんや~」とフレンドリーに話しかけていた。
そんな事があったのね。
梅ちゃんがまだお嫁に行く前のことのようだ。
むっちゃ昔の事じゃん!
なんか茂造さんと通ずるものを感じる。
麦さんも社交的な人なので「いや~ようおぼえてますね~」とにこやかに相手をしていた。
ここから女性3人で話がはずんでいた。
と言っても綿子さんはちょっと置いてけぼりかな?
聞こえないからだと思う。
梅ちゃんは今日は補聴器を付けているからか割と聞こえていたようだ。
その間も松男さんはちょこちょこグチを吐き出していた。
そのグチは梅ちゃんの耳に届かなかったよう。
不思議~。

さすがに麦さんが来たら梅ちゃん一家は帰るだろうと踏んでいたのに帰る気配がない。
松男さんもよっぽど居心地が良かったのかしら。
とにかくグチを言いたかったのかな?
今日で少しはストレス解消できたかな?
そうだといいな。
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綿子さんが仏壇のお参りを済ませリビングに戻るとちょうどハルちゃんとゆうくん、そして翔ちゃんがやってきた。
ほっ。
助かったー!
一気に場が明るくなった。
茂&綿を家に連れて帰る時にはいつもハルちゃんと翔ちゃんにヘルプをお願いしている。
人手は多い方がいい。
そして麦さんも来てくれた。
皆が来てくれて綿子さんもようやく笑顔になった。

弁当を取りに行っていたかつおさんも戻ってきた。
茂造さんも大勢、人がいると嬉しいようだ。
そして次第に色々思い出してきたようで、ようやく綿子さんのことを認識したようだった。

「あれ、綿ちゃんやろが?わしの奥さんやのぉ」

「そうやで」

「だいぶ思い出してきたわ」

「それは良かった」

「わしの頭はボロになってしもたんや。ようけ忘れてしもうたが。ほんまボロになってしもて」

この「ボロになってしもた」は何度も何度も繰り返していた。
一応、自覚はあるのね。

麦さんは綿子さんの顔を見に寄っただけで今日はすぐ帰るそうだ。
そりゃあお盆だし、麦さんも忙しいのだろう。
そんな中、わざわざ寄ってくれてありがたい。
麦さんが帰るというので皆で外まで見送りに行った。
茂造さんは歩くのが拙いので残った。
なのでわたしも残り、昼食の準備をした。

台所でテーブルに弁当を並べたりコップを並べていると茂造さんが「腹減ったが~」と言いながらやってきた。

「今、準備しよるからな。ちょっと待っとってな」

「おっ!美味そうや!」

「皆がそろってから食べようで。ちょっと待っとって」

「おう」

以前の茂造さんなら先に食べ始めていただろう。
いぶきの森で集団生活をして少しは周りに合わせることを覚えたようだ。
人間、いくつになっても成長できるものなのねぇ。

が、皆はなかなか戻ってこない。
名残惜しくてなかなか別れられないのかな?
茂造さんはお弁当を前にソワソワ、ソワソワ。
何度も時計を見上げて
「もう12時やから戻ってくるやろのぉ」
「もう12時過ぎたがー!なんしょんやろかのぉ」
「もう食べようか」

「みんなと一緒に食べんの?」

「そやな。待つわ」

そう言いながらも弁当のふたを開けてみたり、箸を手に取ってみたり、時計を眺めてみたりとホント落ち着かない。
なんだか必死で我慢している姿がなんだかかわいい(笑)
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昨日の続き

そして2階へ。
エレベーターを降りたところでスタッフさんに会った。
すぐさま寄ってきて茂造さんの様子を話してくれた。

ス「今日は朝から山田病院に行くから帰るんやってずっと言ってるんです。綿子が入院しとるから行かないかんのやって」

「ええっ?そうなんですか⁉実は先週家に連れて帰った時に綿子はどこやって言い出したんです。それで骨折して入院しとるんやって言ったんです。そしたらどこの病院や?みどりか?山田か?ってしつこく聞くので山田やって言うておいたんです。まさかまだ覚えているとは!」

ス「今日になって急に言い出したんですよ。思い出したんでしょうね」

「本当に申し訳ありません。ここにいることは絶対にじいさんには言うなって綿子さんから念を押されてるんで、ここにいるとは言えず適当に誤魔化したんですけどね。すぐ忘れるだろうと思ってたんです」

ス「それで山田病院が出てきたんですね。急にどうしたんだろうと思ってたんですよ」

スタッフさんと一緒に茂造さんのもとへ向かった。
茂造さんは部屋で寝ていた。

ス「茂造さん、ご家族さんが会いに来てくれたで。ほら起きよう!」

「ええっ?わし寝るわ」

ス「そんなこと言わんとせっかく来てくれたのに」

「じいさん調子はどうや?」

「わし寝るんや」

「じいさんジュース持って来たぞ」

「ええ。いらん」

「桃のジュースやぞ」

「桃!飲む!」

すくっと起きてベッドに腰かけた。
なんてげんきんな。
キャップを開けて手渡すと

「おお、美味い!」

まだ飲んでないやん…。

ふと隣のベッドを見ると空だった。
マットレスもない。

「あれ?隣の方は?」

ス「あぁ~お亡くなりになったんです」

まさかとは思ったがやっぱりか。
けど木曜日は普通に元気そうだったのに。
いつも無表情でちょっと怖そうな方だったがゆうくんを見て「可愛いのぉ」と表情が緩んだのが思い出される。
ほとんどかかわったこともないのになんだか淋しい…。

茂造さんがジュースを飲み終えたので帰ろうかと思ったら

「まだおれや。急いで帰らんでもええやないか」

と言い出した。
こんなことを言うのは初めてだ。
なので少しお付き合いすることにした。
茂造さんは先週家に帰って来た時のように喋り続けた。
相変わらず昔のことばかりだ。
父の為五郎のことや田んぼのこと兄弟や親せきの話を何度も繰り返す。
そして「わしいつ家に帰れるかのぉ?」といった。
かつおさんが慌てて「家に戻ってどうするんや。食べる事やって出来んやろ。おかんもおらんのぞ」と言うと「わし、自分でするわ。体やって動くのに出来るわ」と腕を振り回して見せる。

「先生に家に帰らせてくれって言うたら家に帰ったら死ぬぞって言われたんや」

「そうや。その通りや」

先生ナイス!
かつおさんは心底ほっとした顔をしている。

「ここにおったらええが」

「隣の人は昨日までそこにおったのに、おらんようになったんや。家に戻ったんやろのぉ。ええのぉ」

家に無言の帰宅をしたんやで。
ええことないやろ。
茂造さんは亡くなったことを理解していないようだ。
けれど何か感じることがあったのだろう。
午前中は綿子さんの見舞いに山田病院へ行くと騒ぎ、今は「まだおってくれ」とわたし達を引き留め喋り続けている。
なにか普段と違う。
そして

「会いに来てくれてありがとなぁ。来てくれるんはあんたらだけや。ありがとうございます」

と言い出した。
大丈夫か?
茂造さんも死期が近いんじゃないかと心配になるじゃないか。

茂造さん、できるだけ長生きしたいんでしょ。
ならここでスタッフさんの言う事を聞いてのんびり暮らすのがいいと思うで。
また時々家に連れて帰るからそれで我慢してください。
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