かつおさん家のボケボケ介護日記

はじめまして好子です。アラフィフの会社員です。 高齢の義両親・茂造さん(93歳)と綿子さん(91歳)の介護をする夫・かつおさんのサポートをしております。 ここにグチを吐き出しながら明るく頑張っていきたいと思います。

タグ:押し問答

昨日の続き

入れ歯が入り、ようやく綿子さんもとうもろこしを食べ始めた頃、茂造さんの相部屋のおじいさんが部屋に入ってきた。
そして二人がとうもろこしを食べているのを見て「ええもん食べよるやないか。わしにもくれ」と言った。
ひえ~。
困ったなぁ~。

「ごめんね。おじいさんにあげることは出来んのや」

爺「そんな事言わんと、一つくれ!」

「家族以外の人にはあげたらイカンことになっとるからな」

爺「ようけあるのに一つくらいええやないか」

しつこい。
しばらく押し問答が続いた。
ボケ老人にいくら説明しても納得する訳もなく…。
かつおさんがスタッフさんに助けを求めに行った。
かけつけたスタッフさんがおじいさんに「〇〇さん、向こうに行ってジュース飲もうよ」と連れて行ってくれた。
今日は3時のお茶の代わりに自家製の梅シロップで作った梅ジュースが振る舞われるそうだ。
施設の庭で取れた梅を漬けてシロップを作ったんだそう。
施設でジュースなんてほとんど出ることないので、おじいさんはジュースと聞いていそいそとデイルームに行ってくれた。
ほっ。

それにしても相方がやって来て押し問答している間、茂造さんは全く気にせずパクパク食べていたが、綿子さんは食べづらそうだった。
そりゃあ普通はそうなるよね。
せっかくのおやつタイムが楽しめないじゃないか。
なるべく他の人の目に触れないように部屋で食べているのに、相方がこれじゃあどうしたらいいのやら。
茂造さんを綿子さんの部屋に連れて行くわけにもいかないし。
まいったなぁ。
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「じゃあそろそろ戻ろうか」

かつおさんは綿子さんの下の事が気になってしょうがない。
ま、先日地獄をみてるものね。

で、いぶきの森へ送って行くとまたも綿子さんは「わたしも今晩家に帰って泊るわ」と言い出した。
うわ!出た!

「それはムリや」

綿「そんなことないわ」

「車いすでどうやって移動するんや。トイレにも行けんやろが」

綿「そんなん言わんと連れて帰ってくれ!」

「ムリや」

綿「頼むわ」

ひたすら押し問答が続く。

「歩けるようになったら帰れるわ。今は無理やがな」

助け舟を出したつもりだったのだが

綿「頼むわ~」

ダメだこりゃ。
とにかく帰りたい一心で帰ったらどうなるかを想像できないのね。
この後も「連れて帰ってくれ」と10回以上は言った。
けどどうにもできない。
無理と言い続けているとこっちも辛くなる。
「また明日来るからな」と半ば逃げるように引き上げたのだった。
むっちゃ後味の悪いこと。

綿子さんと別れた後、かつおさんは「ほんまにムチャ言うわ!」と怒り心頭。

「勘弁してくれよ!じいさんはあっさりしとったのに。あれやから行きとう無くなるんや!せっかく一泊させてやろうとしとったのに自分が転ぶからイカンのやろが!」

グチが止まらない。
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昨日の続き

「じいさん、来たぞ」

「おっ!迎えに来てくれたんか!ほな靴履くわ」

「いやいや、違う違う!家には帰らんぞ」

「なんでや!」

「おやつ持って来たから食べようや」

「ほうか、これ食べたら帰れるんやの」

何を言っても『帰る』につながる。
こりゃ大変だ。

とりあえずなだめてベッドに腰かけさせおやつを食べさせた。

「美味いのぉ~~」

おっ?ちょっと気がまぎれたか?
と思ったがそんなに甘くはなかった。
お菓子を食べ終わるとまた「家に帰るんや」と言い出した。
一応理由があるようだ。

「腹が痛いんや。山田病院に行って診てもらうんや」

「何を言うとんや。ここはお医者さんやないか。ここは佐藤さんやが。ここで診てくれるわ」

「いや、違う!」

「違わへんわ。それに土曜日やから山田病院はもう閉まっとるわ」

「そしたら澤田医院に行くわ」

澤田医院?
そんな病院とっくの昔に閉院しとるわ。
もうかれこれ40年以上も前のことだ。
やはり茂造さんは今、小学生か中学生だった時代の中にいるようだ。

「澤田医院はもうないから。それに今日は土曜日やから下戸も月曜にならな診てもらえんぞ。それまで寝てじっとしとき」

「いや、帰るんや。帰ったら治る」

今日はゆうくんのことは眼中にない。
ひたすら「家に帰る」ことに執着している。
すみません、スタッフさん達。
わたし達の手には負えません。

この後も何度も何度も「帰る!」、「それはムリ」、「なんでや!」を繰り返した。
「なんでや?」に答えたところで全く理解しないし、話がかみ合わないので理論的な説明は不要だ。
ひたすら「ムリ」で押し通すしかない。

やがて押し問答に疲れたのかようやく「もう寝るわ」と言った。

やったーー!!
やっと終わったーー!!
ふぅーーー。

茂造さんがベッドに寝転んだらすかさず引き上げた。

部屋から出ると

ス「ありがとうございました」

やりとりは全部聞こえていただろう。

「いえいえ、全然納得していないのでまた帰るって騒ぐんじゃないかな。申し訳ありません」

ス「お疲れ様でした」

ホント疲れたーーー!!
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2月18日 日曜日

朝9時前、かつおさんの携帯電話が鳴った。
見ると知らない番号だ。
どうも携帯からのようだ。
誰だろう?
とりあえず出てみた。
すると電話の相手はなんと綿子さんだった。

綿「かつお、わたしもう退院しようと思うんや~」

かつおさんは目を白黒させている。
まさかの綿子さん!
まさかの帰るコール!
ビックリもいいとこだ。

「いやいや、何を言うとるんや!退院するって、退院してどうするんや?自分も納得してそこでおるって言うたんと違うんか?」

綿「いや~ここで居ってものぉ~」

「帰ったって家に一人で居るんは怖いって言うとったやないか。それに自分のこと自分でちゃんとできるんか?」

綿「いや、お前に面倒見てもらおうと思うて」

「アホ言え!わしは面倒見れんぞ!おかんが入所したからやっと出張に行けるようになったんや。わしは出張に行くからおらんぞ」

綿「いや~でも~」

「無理やし!!」

ここからしばらく押し問答が続いた。
が、終いに

綿「もうええ!」

と綿子さんが電話を切ったそうだ。
電話が切れた後もかつおさんは興奮状態だ。

「アホちゃうんか!勘弁してくれ!いかん、また胸がドキドキしてきたやないか!」

綿子さんが何か言い出すたびに、かつおさんの寿命は確実に縮んでいる気がする。

それにしても綿子さんは覚悟ができて落ち着いたんじゃなかったのか?
先週化粧品だって持って行ったのに。
でもまだ入所して1カ月も経っていない。
やはり気持ちの波があるのだろう。

それにしてもスタッフもスタッフだ。
綿子さんに頼まれて電話をかけてきたんだろうが、そんなの断れよ!
それに電話をかけるなら「綿子さんが話があるそうです」って先に言ってから代われよ!
いきなり綿子さんから電話なんて面食らうじゃないか。
今日は日曜日でスタッフが手薄だったからこんなことになったのだろうか?
よっぽど綿子さんがウザくて電話したのだろうか?
また疑問だらけになってしまった。

そしてこの日一日、かつおさんは度々「もう退院しようと思うんや~」と綿子さんのセリフを繰り返しつぶやき、「アホか!」と一人でカッカしていたのだった。
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