かつおさん家のボケボケ介護日記

はじめまして好子です。アラフィフの会社員です。 高齢の義両親・茂造さん(93歳)と綿子さん(91歳)の介護をする夫・かつおさんのサポートをしております。 ここにグチを吐き出しながら明るく頑張っていきたいと思います。

タグ:米さん

ようやく理解したようでホッとしたのも束の間、今度はわたしに向かって「あんた誰な?」と言い出した。

「好子や」

「えっ?」

「好子や」

「えっ?」

好子というワードが頭に無いから何度言っても分からない。

「かつおさんの嫁や」

「何いうんな?」

「好子や」

「えっ?」

もうええやん。
勘弁してくれー!

結局このターンは延々10回ぐらい繰り返し続いた。
そしてようやく

「そっちにおるんはわしの息子か?」

「そやで。名前分かる?」

「秀夫やの!」

「違うで。かつおやで」

「そうか!かつおか!」

「そう、そう」

「わしの息子は二人おるんや。秀夫とかつおや」

もうええ。
それでいいよ。
訂正しても無駄だ。

そしてまた

「あんた誰な?」

綿「綿子や」

「綿子いうたらわしの嫁さんぞ」

綿「そうや」

「こんなん違う」

「違わん!」

「ほなどこから来たんや?」

「病院や」

「ほれやっぱり違うやないか。わしの嫁はクスミから来たんや」

それフネさんの里やん!
それ先週も言うとったやん。
まだ間違ったままなのね。

「それならニゲタや」

「ニゲタ?クスミ違うんか?」

「ニゲタ!光三さんの嫁の米さんもニゲタ!ばあさんの姉さんや」

「おう!そうや!」

やっと思い出せたようだ。

「米さんや光三さんは元気か?」

「もう死んだ」

「嘘言え!こないだ会うたが!」

そんな訳あるかい!
しかし茂造さんはこないだ会うたの一点張り。
きっと夢で会ったんでしょ。

とにかく茂造さんは今日もよく喋った。
その茂造さんを見ながら綿子さんは終始笑顔だった。
以前は自分の事が分からなくなっているという事を認めたくない様だったが、茂造さんがかなりボケてしまっていることを理解したらすんなり認める気になったのかな。
そして安心したように思う。
顔を見ても分からないし、4階まで押しかけて来ることは絶対ないとようやく理解したようだ。

茂造さんと別れ4階に向かっていると

綿「漫才見よるようやったわ~」

と笑っていた。
楽しかったようでなにより。
けどわたしは疲れました。

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昨日の続き

茂造さんの部屋を後にし、4階へ行こうとエレベーターに乗ったらちょうどスタッフさんと一緒になった。

ス「もう、落ち着きましたか?」

米さんのことを差しているようだ。
が、落ち着くも何も米さんは伯母さんだから葬儀に出席するくらいであとは特に用は無いのだが。

「まぁ~」

なんと答えたらいいのか分からない。

ス「そういえば米さんが亡くなった日、茂造さんが米さんの話をずっとしてたんですよ。米さんがどうのこうの~、光三さんがどうのこうの~って。米さん、最後に挨拶に来たんですかねぇ」

「へぇ~」

不思議なこともあるものだ。
茂造さんは今だに米さんが亡くなったことを知らない。
伝えてもすぐ忘れるだろう。
それに同じフロアで生活していたけどお互い認識できてなかったし。
けど最後に挨拶に来てくれたんだとしたら嬉しいな。
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麦さんは帰る前にもう一度米さんの部屋を覗きに行った。
するとスタッフさんが米さんを車イスに移乗させていた。
スタッフさんは麦さんに気づくともう一度米さんに声をかけてくれた。

ス「米さん、妹さんが来てくれとるよ」

「ねえさん、起きたんな。元気にしとる?私、誰か分かる?」

米さんはしばらくして「わたこ」と答えた。
やっと少しだけ声が出た。

「綿子ちゃうで、私は麦や」

米さんは少しだけにこっと笑ったように見えた。
けどそれ以降、やっぱり声を発することは無かった。
そして車イスで移動する米さんと一緒にデイルームに戻った。

「姉さん、元気でな。また来るわ」

茂造さんの部屋から出てきたかつおさんも米さんを見てびっくりしていた。
無表情で空を見ている。
ほんの3カ月でこうも進むのか。

帰りの車内で麦さんはまた涙ぐんでいた。

「姉さんはもう長くないかもしれんなぁ」

「いや~ビックリしたわ。あれではかっちゃん(米さんの娘)たちも会いに来るん辛いやろなぁ」

「でも綿ちゃんと茂造さんはまだまだ長生きしそうや」

「勘弁して~」

同じ施設に入所している3人。
ほんと、三人三様、みんな全然違う。
綿子さんと米さんは4歳違い。
4年後には綿子さんも米さんのようになっているかもしれない。
親の介護はだんだん弱っていく姿を目の当たりにしなくてはならない。
まず良くなることはないのだから。
本当につらい仕事だ。
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昨日の続き

そして次に皆で2階に移動した。
茂造さんは部屋にいるようでデイルームに姿は無かった。
茂造さんはいるかいないかすぐ分かるが米さんは分からない。
それくらい以前とは変わってしまっていた。
なのでスタッフさんに尋ねる。

「米さんはどちらですか?こちら米さんの妹さんなんです」

ス「今、部屋で休んでますね。ご案内します」

かつおさんに茂造さんの相手を任せ、麦さんと米さんのもとへ向かった。
米さんの部屋は4人部屋だった。
廊下側の入って左手だ。
米さんはベッドで横になっていた。

ス「米さん、妹さんが会いに来てくれたよ。起きようか」

耳がかなり遠いのかスタッフさんは耳元で大きな声で話しかけていた。
米さんは何も返事をしない。
麦さんが近寄って「姉さん、会いに来たで。私、誰か分かる?」と声をかけた。
が、やはり反応がない。

「麦やで。久しぶりやなぁ」

色々声をかけてみるがやっぱり反応はほぼない。
スタッフさんも耳元でいろいろ話しかけてくれたが、米さんは何も喋らないし表情も変わらない。
6月に会った(見かけた)時よりいっそう進んでいるいるみたいだ。

しばらく一方的に声掛けしたが反応が無いので諦めた。
茂造さんの部屋へ向かいながら麦さんは涙ぐんでいた。

茂造さんの部屋ではかつおさんがゆうくんを連れなんとか茂造さんの相手をしていた。
こちらはいつも通り。
茂造さんは元気いっぱいだ。
私たちが部屋に入るとちょうど麦さんお手製の栗おこわを食べさせようとしていたところだった。

「ほれ、じいさん、栗おこわや」

「おお~ええのぉ!美味そうや!」

麦さんは茂造さんの傍に近寄って挨拶した。

「お兄さんお久しぶりです」

「じいさん、誰か分かるか?」

「麦さんや」

おおーーー!!
凄いじゃないか!!
今日は絶好調のようだ。
ま、『栗おこわ=麦さん』と刷り込まれていたという事かもしれないが。

茂造さんは栗おこわをとても美味しそうに食べた。
食べ終わると入れ歯を外し、入れ歯の裏側に挟まった米粒までキレイになめた。
麦さんも居るのに行儀が悪い!
ま、誰がいようがお構いなし、我が道を行くのが茂造さんだ。
幸い麦さんは大笑いしてくれたので良かった。
ここまで喜んで食べてくれたら作ってきた甲斐があるわと言ってくれた。
茂造さんの面会は明るく過ごせていい。
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昨日の続き

この日、スタッフさんに確認したのだが面会は家族以外の人でもOKで、面会時間内ならいつでもいいし、10分間などの制限も全て無くなったそうだ。
面会時間は午前8時から午後8時。
この間ならいつ来ていつまでいてもいいそうだ。
びっくりするほど緩和された。
つい1週間前がウソのようだ。

けれどこうなったという事は米さんに会ってもOKという事だ。
米さんは茂造さんと同じ2階に入所している。
ちょうどみんなデイルームに集まっていたのでこの中に米さんも居るはず。
見渡したがどの方が米さんか分からなかった。
スタッフさんに「米さんはどちらですか?」と尋ねて教えてもらったのだが「あちらが米さんです」と教えてもらっても初めはピンとこなかった。
ずい分痩せて顔が変わってしまっていた。
なのですぐには分からなかったのだ。
でもよーく見ると面影が。
かつおさんが米さんのもとへ行き声をかけた。
「おばさん、かつおです」と言うとニコッと笑ったそうだ。
けれど言葉は出てこなかったそうだ。
米さんはぼ~っとした顔をしていた。
なんとも覇気のない顔だ。
元気だったころの米さんとは全く違っていた。
米さん…

かつおさんは帰りながら「あなんなるんやのぉ。あれではかっちゃん達(米さんの娘さん達)も会いに来るの辛いやろのぉ」とつぶやいていた。
うちだって数年後には米さんのようになるかも知れない。
覚悟しておかないと。
ま、今のところはまだまだ大丈夫そうだけど。


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