かつおさん家のボケボケ介護日記

はじめまして好子です。アラフィフの会社員です。 高齢の義両親・茂造さん(93歳)と綿子さん(91歳)の介護をする夫・かつおさんのサポートをしております。 ここにグチを吐き出しながら明るく頑張っていきたいと思います。

タグ:綿子さん

昨日の続き

綿子さんをホールに送り届けた草野マネージャーが戻って来た。
わたしはさっきの話をぶつけてみた。

「綿子さんがお金を持って来てくれって言うんです」

「えっ?お金ですか?」

「はい。なんでも今月末に帰国するスタッフに世話になったからみんなでお金を渡すんやって言うんです」

「ええっ!いえ、帰国する者はおりますが、いや~まさかそんな話になっていたとは」

草野さんも知らなかったようだ。

「お金は持ち込み禁止でしたよね?他の人もお金は持ってないですよね?」

「はい。きっと綿子さんと仲のいい同じテーブルの人達でそんな話になってるんでしょうね。ちょっと注意して見ておきます」

「よろしくお願いします。それでお金は持って来れんって断ったら黙り込んでしまって。自分だけ用意できないと思って辛かったみたいで」

「他の人もお金や持ってないやろがって言うたんですけど、他の人は引き落としにしてもらいよるとか言い出して」

「あらまぁ」

「それからその次に3月末で退院するんやって言い出したんです。なんでも何人か家に帰った人がいたとかで、自分も帰るって言い出しまして」

「えっ?いえ、綿子さんが入所してから家に帰った人は一人もいませんよ」

「やっぱりそうですか。けど、なんでも4月に退院する人がいて、その人に綿子さんはいつ帰るん?って聞かれたから3月末かなって答えたんやって言ってました」

「いやいや、4月で帰る予定のの人もいませんし」

やはりボケ老人同士の会話だったのね。
思った通りだ。

「普段は楽しそうに過ごされてまして、帰りたいとか言うことは無いんですけどねぇ」

草野マネージャーと話して綿子さんの言う事にはやはり妄想がふんだんに盛り込まれていたんだと確信した。
それならいちいちまともに受けずに適当にいなした方が良かったのだろうか?
とにかくせっかく面会に来たのに、最後はみんなだんまりで重ーーい空気になってしまった。
草野マネージャーも様子を見に来た時にあれ?っと思ったそうだ。

「それでみんさん、なんだかおかしな顔をされてたんですね。綿子さんもいつもと顔つきが違うなぁと思ったんです」

「お通夜みたいだったでしょう。お金を持って来いとか、退院するとかアカンことばっかり言うもんやから、断ったら黙り込んでしもうて。こっちも何を言うたらええか分からんようになってしもて。こんなにタイマーが鳴るのが待ち遠しかったのは初めてですわ(笑)」

「ホント、まだ鳴らんの?ってずっと思ってました(笑)」

「それは待ち遠しかったですよね。いや~~すみません(笑)」

餞別の件など後のことは草野マネージャーにお願いして帰ることにした。
パーテーションの向こうの綿子さんを覗くと嬉しそうにみんなにおしぼりを配って歩いていた。
イキイキして楽しそうだ。
こちらに気付いたので手を振るとニコッとしながら手を振り返してくれた。
ちょっと安心した。
やっぱり結構楽しくやってるんじゃん。
また来よう。
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昨日の続き

重い空気に耐えかねてこっそり時計を見た。
既に10分経っている。
えっ?
どういう事?
なんでタイマー鳴らないんだ?
もしかしてスタートボタンを押せてないんじゃ?
どうしようと考えあぐねていたら草野マネージャーがやって来た。
助かったー。
草野マネージャーもなかなかタイマーが鳴らないので気になって見に来たそうだ。
そして確認するとやはりタイマーは動いてなかった。

「あらすいません、これちょっと調子が悪いんです」

面会したくてたまらない人にはちょうどいいのだろうが今日のわたし達には最悪だ。

「綿子さん、息子さんとしっかり話できたんな?」

綿「まあな。こうやって会いに来てくれてありがたいと思っとるんや」

「そしたら席に戻ろうな。もうお昼やから、いつもみたいにみんなにおしぼり配ってくれる?」

綿「はい」

「いつも綿子さんに手伝ってもらって助かってるんです」

「さっき本人もおしぼりを畳んだり手伝いをしよんやって言ってましたね」

「そうなんです。こうやって手伝いを頼める人はあまりいなくって。綿子さんには手伝ってもらえるからありがたいんです」

「へえ~」

「さぁ綿子さん、お昼ご飯食べて、昼からプリントでもしような」

綿「はい」

えっ?
さっき塗り絵とかしてないん?って聞いたらしてないって言うとったやん。
やっぱり適当なことを言ってたのね。
手伝いばっかりしていると強調したかったのかな?

綿子さんは草野さんに連れられ、ホールへ戻って行った。
やっと終わったとホッとした。
結局、面会は20分くらいだったのだがわたし達には1時間くらいに感じたのだった。
はぁ~疲れたー。

続く
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昨日の続き

しばらく沈黙が続いた後、それを破ったのは綿子さんだった。

綿「ところで私、3月31日で退院しようと思うんや」

はあ!?
また寝ぼけたことを!
相変わらず退院って言うてるけどそれを言うなら退所やん。
けどそんなことどっちでもいいからスルーする。

慌ててかつおさんが

「退院してどうするんや?自分で自分の事出来んやろが」

綿「それはそうやけど…」

「帰って来たってわしは面倒見れんぞ!一人で生活できるんか?」

綿「・・・・・・」

また黙り込んでしまった。
まだ10分経たないのかしら?
タイマーが鳴るのが待ち遠しくて仕方ない。

綿「いや、ここに居る人も何人か家に帰ったからの。私もそろそろ帰ろうかと思っとったんや」

「そんなに退院する人おるんか?」

綿「仲のええ人も4月に帰るんやって。それでお母さんにもいつ退院するん?って聞かれたから3月末で帰ろうと思っとるんやって言うたんや」

言ったからって帰れません!
それに4月で退院するって人も本当かどうか怪しいものだ。

「おかんは帰れんやろが。帰ってどないするんや。ここで居った方が楽しいやろが。そりゃ帰りたい気持ちも分かるけど、一人では無理やろが」

綿「・・・・・・」

「家に帰ったら一人になるで。一人やと怖いんやろ?ここにおったら怖いこともないし、食べる事の心配もせんでええやろ」

綿「それはそうや」

「ここで居る方がええやろが」

またも沈黙の時間が過ぎた。
そしてまたも綿子さんが口を開いた。

綿「もし帰るとしたら部屋にいっぱいある荷物はどうするんやろか?って考えよったんや。冬物の服とか何やらいっぱいあるやろ。みんなどうしよんやろかって思うてな」

「家に帰れる人は自分の荷物は自分でちゃんとまとめて持って帰れる人やがな。自分で出来ん人は帰れんがな」

綿「いや、わたしも自分で出来ると思うわ」

こりゃダメだ。
帰りたいモードになっているようだ。

「出来んやろが。とにかく家には帰れんのや」

綿「お前忙しいんか?」

「おう、明日からまた出張やしの」

綿「そうか」

またまた黙り込んでしまった。
もう何を言ったらいいのか分からない。
10分はまだ?

続く
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昨日の続き

綿「おう、そうや!お前に電話しようと思っとったんや。電話してお金を持って来てもらおうと思っとったんや」

はあ?!
お金?
嫌な予感がする。

  ※嫌な予感の根拠となる過去のいきさつです
  
  
  
  (この後も入院するたびいろいろありました)

「お金?なんでお金がいるんや?お金使うとこや無いやないか」

綿「いや、2000円くらい持って来て欲しいんや」

「2000円って何に使うんや?」

綿「よう世話してくれる子が居るんやけどの」

出た!
またいつもの悪い癖だ。
かつおさんとわたしは思わず顔を見合わせた。

綿「その子がこの3月末で国に帰るんや。(いぶきの森には外国人実習生が数名いるようだ)それでみんなでお金を渡すことになったんや。わたしはお金持ってないから、息子に持って来てもらうわって言うてあるんや」

「そのことスタッフの人は知っとるんか?」

綿「みんなでそうやって話したんや」

答えになってない…。

「いや、それはアカンのと違うか?」

綿「みんなに息子に持って来てもらうって言うたのに。ほら私は10円も持ってないから」

「いやいや、そうやってお金を渡すのはトラブルの元やないか。みどり整形の時もそうやったやろが」

綿「持って来てくれんのか?」

「持って来れんわ」

綿「けどみんなに…。ほんまにようしてくれるんや。今度、親元に帰るからの」

みんなと約束したからか、やけに食い下がる。

「ここにはお金は持ってきたらイカンことになっとるからな。みんなやってお金持ってないと思うで」

「そうやが、みんなどうしよんや?」

綿「みんなは引き落としにでもしてもらっとるんやろ」

はぁ?
引き落とし?
よく思いついたなぁと感心するわ。

綿子さんの言うみんなというのは、綿子さんと仲の良いおしゃべり仲間のことだろう。
けど今の話を聞いて思ったのだが、そのみんなもボケているんじゃないだろうか?
きっとみんなもお金なんか持ってないのに、そんな話になっているという事はやっぱりそういう事なのだろう。

綿「持って来てくれんのか?」

「そうや!」

綿「はぁ~~~~」

とても悲しそうな暗い顔になってしまった。
もう何も言えない。
しばらく沈黙が続いたのだった。

続く
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2月18日 日曜日

朝9時前、かつおさんの携帯電話が鳴った。
見ると知らない番号だ。
どうも携帯からのようだ。
誰だろう?
とりあえず出てみた。
すると電話の相手はなんと綿子さんだった。

綿「かつお、わたしもう退院しようと思うんや~」

かつおさんは目を白黒させている。
まさかの綿子さん!
まさかの帰るコール!
ビックリもいいとこだ。

「いやいや、何を言うとるんや!退院するって、退院してどうするんや?自分も納得してそこでおるって言うたんと違うんか?」

綿「いや~ここで居ってものぉ~」

「帰ったって家に一人で居るんは怖いって言うとったやないか。それに自分のこと自分でちゃんとできるんか?」

綿「いや、お前に面倒見てもらおうと思うて」

「アホ言え!わしは面倒見れんぞ!おかんが入所したからやっと出張に行けるようになったんや。わしは出張に行くからおらんぞ」

綿「いや~でも~」

「無理やし!!」

ここからしばらく押し問答が続いた。
が、終いに

綿「もうええ!」

と綿子さんが電話を切ったそうだ。
電話が切れた後もかつおさんは興奮状態だ。

「アホちゃうんか!勘弁してくれ!いかん、また胸がドキドキしてきたやないか!」

綿子さんが何か言い出すたびに、かつおさんの寿命は確実に縮んでいる気がする。

それにしても綿子さんは覚悟ができて落ち着いたんじゃなかったのか?
先週化粧品だって持って行ったのに。
でもまだ入所して1カ月も経っていない。
やはり気持ちの波があるのだろう。

それにしてもスタッフもスタッフだ。
綿子さんに頼まれて電話をかけてきたんだろうが、そんなの断れよ!
それに電話をかけるなら「綿子さんが話があるそうです」って先に言ってから代われよ!
いきなり綿子さんから電話なんて面食らうじゃないか。
今日は日曜日でスタッフが手薄だったからこんなことになったのだろうか?
よっぽど綿子さんがウザくて電話したのだろうか?
また疑問だらけになってしまった。

そしてこの日一日、かつおさんは度々「もう退院しようと思うんや~」と綿子さんのセリフを繰り返しつぶやき、「アホか!」と一人でカッカしていたのだった。
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