かつおさん家のボケボケ介護日記

はじめまして好子です。アラフィフの会社員です。 高齢の義両親・茂造さん(93歳)と綿子さん(91歳)の介護をする夫・かつおさんのサポートをしております。 ここにグチを吐き出しながら明るく頑張っていきたいと思います。

タグ:草野マネージャー

3月29日 金曜日

今日からかつおさんと一泊二日の旅行へ。
一番の目的は高野山だが、それは二日目。
まずは大阪へ向かう。
向かっている道中かつおさんが
「そうや!言うの忘れとったけど昨日また、ばあさんから電話がかかってきたんや」
と言い出した。

「いや~昨日は突然花さん達が来たから、ビックリして言うの忘れとったわ~」

「ほんまびっくりしたなぁ~」

「昼間にな、また携帯電話からかけてきたんや。また誰かスタッフの携帯を借りたんやろなぁ」

「それで何て?」

「いや、わし電話が鳴ったのに気が付かんかったから出てないんや。それで留守電に「お前に頼みたい事があるんや」って入っとったんや」

「頼みたい事ってお金の事かな?」

「たぶんそうやろ。そんな気がするわ」

「で、どうするん?」

「放っといたらええやろ」

「そやな。こっちからかけ直してお金持ってこいって言われても困るもんな。お互い気分が悪なるだけやし。けどこうやって携帯から電話がかかってくるのも2回目やし、草野マネージャーの耳には入れといた方がええんと違う?」

「そやな。言うといた方がええやろな。今度電話で話しとくわ」

やれやれ。
前回は日曜日だったから、まだ経験の浅いスタッフが綿子さんの頼みを断り切れずに電話してきたのかと思ったが、今回は平日の昼間じゃないか。
で、今回も前回同様いきなり綿子さんが電話に出てるし。
ちゃんとしたスタッフなら綿子さんがどうしても用があると言うなら施設の固定電話からかけてくるだろうし、まずはスタッフが電話口に出て「綿子さんがどうしても息子さんと話がしたいと言っていますので代わります」って一言事情を説明してからつないでくれるはずだ。
ひょっとしてこの携帯の持ち主は実習生か?
とにかくこのままじゃ良くない気がする。
草野マネージャーに報告しておこう。
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昨日の続き

綿子さんをホールに送り届けた草野マネージャーが戻って来た。
わたしはさっきの話をぶつけてみた。

「綿子さんがお金を持って来てくれって言うんです」

「えっ?お金ですか?」

「はい。なんでも今月末に帰国するスタッフに世話になったからみんなでお金を渡すんやって言うんです」

「ええっ!いえ、帰国する者はおりますが、いや~まさかそんな話になっていたとは」

草野さんも知らなかったようだ。

「お金は持ち込み禁止でしたよね?他の人もお金は持ってないですよね?」

「はい。きっと綿子さんと仲のいい同じテーブルの人達でそんな話になってるんでしょうね。ちょっと注意して見ておきます」

「よろしくお願いします。それでお金は持って来れんって断ったら黙り込んでしまって。自分だけ用意できないと思って辛かったみたいで」

「他の人もお金や持ってないやろがって言うたんですけど、他の人は引き落としにしてもらいよるとか言い出して」

「あらまぁ」

「それからその次に3月末で退院するんやって言い出したんです。なんでも何人か家に帰った人がいたとかで、自分も帰るって言い出しまして」

「えっ?いえ、綿子さんが入所してから家に帰った人は一人もいませんよ」

「やっぱりそうですか。けど、なんでも4月に退院する人がいて、その人に綿子さんはいつ帰るん?って聞かれたから3月末かなって答えたんやって言ってました」

「いやいや、4月で帰る予定のの人もいませんし」

やはりボケ老人同士の会話だったのね。
思った通りだ。

「普段は楽しそうに過ごされてまして、帰りたいとか言うことは無いんですけどねぇ」

草野マネージャーと話して綿子さんの言う事にはやはり妄想がふんだんに盛り込まれていたんだと確信した。
それならいちいちまともに受けずに適当にいなした方が良かったのだろうか?
とにかくせっかく面会に来たのに、最後はみんなだんまりで重ーーい空気になってしまった。
草野マネージャーも様子を見に来た時にあれ?っと思ったそうだ。

「それでみんさん、なんだかおかしな顔をされてたんですね。綿子さんもいつもと顔つきが違うなぁと思ったんです」

「お通夜みたいだったでしょう。お金を持って来いとか、退院するとかアカンことばっかり言うもんやから、断ったら黙り込んでしもうて。こっちも何を言うたらええか分からんようになってしもて。こんなにタイマーが鳴るのが待ち遠しかったのは初めてですわ(笑)」

「ホント、まだ鳴らんの?ってずっと思ってました(笑)」

「それは待ち遠しかったですよね。いや~~すみません(笑)」

餞別の件など後のことは草野マネージャーにお願いして帰ることにした。
パーテーションの向こうの綿子さんを覗くと嬉しそうにみんなにおしぼりを配って歩いていた。
イキイキして楽しそうだ。
こちらに気付いたので手を振るとニコッとしながら手を振り返してくれた。
ちょっと安心した。
やっぱり結構楽しくやってるんじゃん。
また来よう。
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昨日の続き

重い空気に耐えかねてこっそり時計を見た。
既に10分経っている。
えっ?
どういう事?
なんでタイマー鳴らないんだ?
もしかしてスタートボタンを押せてないんじゃ?
どうしようと考えあぐねていたら草野マネージャーがやって来た。
助かったー。
草野マネージャーもなかなかタイマーが鳴らないので気になって見に来たそうだ。
そして確認するとやはりタイマーは動いてなかった。

「あらすいません、これちょっと調子が悪いんです」

面会したくてたまらない人にはちょうどいいのだろうが今日のわたし達には最悪だ。

「綿子さん、息子さんとしっかり話できたんな?」

綿「まあな。こうやって会いに来てくれてありがたいと思っとるんや」

「そしたら席に戻ろうな。もうお昼やから、いつもみたいにみんなにおしぼり配ってくれる?」

綿「はい」

「いつも綿子さんに手伝ってもらって助かってるんです」

「さっき本人もおしぼりを畳んだり手伝いをしよんやって言ってましたね」

「そうなんです。こうやって手伝いを頼める人はあまりいなくって。綿子さんには手伝ってもらえるからありがたいんです」

「へえ~」

「さぁ綿子さん、お昼ご飯食べて、昼からプリントでもしような」

綿「はい」

えっ?
さっき塗り絵とかしてないん?って聞いたらしてないって言うとったやん。
やっぱり適当なことを言ってたのね。
手伝いばっかりしていると強調したかったのかな?

綿子さんは草野さんに連れられ、ホールへ戻って行った。
やっと終わったとホッとした。
結局、面会は20分くらいだったのだがわたし達には1時間くらいに感じたのだった。
はぁ~疲れたー。

続く
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