昨日の続き

やっと家に帰るときの話がついたので話題はゆうくんのことやハルちゃんのこと、そして翔ちゃんが茂造さんに説教されたことなどに移った。
にこにこと楽しそうに会話が弾んだ。
そしてかつおさんから綿子さんにブラウスをプレゼントした。

「はい、ばあさん。母の日のプレゼントや」

綿「ええっ!!かまんの」

「見てみて」

包みを開けブラウスを広げてみた綿子さんは

綿「うわ~きれいな色や。ありがとうなぁ」

また泣いた。
相変わらず涙は出ないが。
綿子なりのマナーなのかもしれない

そうしているうちに15分がたちタイマーが鳴った。
スタッフさんがやって来て「そしたら部屋に戻ろうな」と綿子さんをエレベーターの方へ誘導してくれた。

ス「あっちょっとここで待っとってよ」

エレベーターの少し手前で待つように指示された。
扉の真ん前で待つと茂造さんから見えるかも知れないからのようだ。
エレベーターが2階に到着し扉が開くと

ス「さあ、見つからんうちに乗ってよ」

と急かされ、あっさり別れることとなった。
綿子さんのわがままにスタッフさん達も色々配慮してくれているようだ。
けどこれがいつの間にか自分から言い出した事ではなく、スタッフから言われて仕方なく会えないんだというように変換されるとは。
やはり痴呆は恐ろしい。

けれどわたし達としてはあっさり別れられて良かった。
じゃなきゃ翔ちゃんに向かって「また顔見せてくれの」と言って泣くに決まっているもの。

そうそう4階へ向かったエレベーターが降りてくるのを待っていると、食堂の方から茂造さんの声が聞こえてきた。
どうも太い柱の陰にいるようで姿は見えないがたしかにこの中にいるようだ。
大きな声でずっと喋っている。
相変わらず元気そうだ。
会う事は出来ないが元気な様子を知ることができてよかった。
声が大きいのもたまには役に立つね。



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