かつおさん家のボケボケ介護日記

はじめまして好子です。アラフィフの会社員です。 高齢の義両親・茂造さん(93歳)と綿子さん(91歳)の介護をする夫・かつおさんのサポートをしております。 ここにグチを吐き出しながら明るく頑張っていきたいと思います。

タグ:長生き

6月 25日 木曜日

今日もかつおさんが洗濯物の回収に行った。
帰って来たかつおさん、明るい顔だ。
月曜、スタッフさんから「茂造さんが晩御飯も食べずに寝てるんです」と聞いて暗い顔をして戻って来た時とは明らかに違う。

「茂造さん、どうやった?」

「完食!ご飯、食べんかったのはあの時だけみたいや。今日はあの時とは違う人やったから「じいさん、ご飯食べてますか?」って聞いたら不思議そうな顔して「しっかり食べてますよ。今日も完食です!」って。やっぱりあの日はたまたまやったんやな」

やっぱり、思った通りだ。
かつおさんは嬉しそうだ。
普段「いつまで生きるんや!」とか言ってるが、やはり調子が悪いと心配するし、いつも通りに戻ると嬉しいのよね。
解放されたいけどやはり亡くなるのは辛い。
ジレンマだ。
けどまだまだ茂造さんにお迎えは来ないようだ。
嬉しいような、恐ろしいような…。
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麦さんは帰る前にもう一度米さんの部屋を覗きに行った。
するとスタッフさんが米さんを車イスに移乗させていた。
スタッフさんは麦さんに気づくともう一度米さんに声をかけてくれた。

ス「米さん、妹さんが来てくれとるよ」

「ねえさん、起きたんな。元気にしとる?私、誰か分かる?」

米さんはしばらくして「わたこ」と答えた。
やっと少しだけ声が出た。

「綿子ちゃうで、私は麦や」

米さんは少しだけにこっと笑ったように見えた。
けどそれ以降、やっぱり声を発することは無かった。
そして車イスで移動する米さんと一緒にデイルームに戻った。

「姉さん、元気でな。また来るわ」

茂造さんの部屋から出てきたかつおさんも米さんを見てびっくりしていた。
無表情で空を見ている。
ほんの3カ月でこうも進むのか。

帰りの車内で麦さんはまた涙ぐんでいた。

「姉さんはもう長くないかもしれんなぁ」

「いや~ビックリしたわ。あれではかっちゃん(米さんの娘)たちも会いに来るん辛いやろなぁ」

「でも綿ちゃんと茂造さんはまだまだ長生きしそうや」

「勘弁して~」

同じ施設に入所している3人。
ほんと、三人三様、みんな全然違う。
綿子さんと米さんは4歳違い。
4年後には綿子さんも米さんのようになっているかもしれない。
親の介護はだんだん弱っていく姿を目の当たりにしなくてはならない。
まず良くなることはないのだから。
本当につらい仕事だ。
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昨日の続き

そして2階へ。
エレベーターを降りたところでスタッフさんに会った。
すぐさま寄ってきて茂造さんの様子を話してくれた。

ス「今日は朝から山田病院に行くから帰るんやってずっと言ってるんです。綿子が入院しとるから行かないかんのやって」

「ええっ?そうなんですか⁉実は先週家に連れて帰った時に綿子はどこやって言い出したんです。それで骨折して入院しとるんやって言ったんです。そしたらどこの病院や?みどりか?山田か?ってしつこく聞くので山田やって言うておいたんです。まさかまだ覚えているとは!」

ス「今日になって急に言い出したんですよ。思い出したんでしょうね」

「本当に申し訳ありません。ここにいることは絶対にじいさんには言うなって綿子さんから念を押されてるんで、ここにいるとは言えず適当に誤魔化したんですけどね。すぐ忘れるだろうと思ってたんです」

ス「それで山田病院が出てきたんですね。急にどうしたんだろうと思ってたんですよ」

スタッフさんと一緒に茂造さんのもとへ向かった。
茂造さんは部屋で寝ていた。

ス「茂造さん、ご家族さんが会いに来てくれたで。ほら起きよう!」

「ええっ?わし寝るわ」

ス「そんなこと言わんとせっかく来てくれたのに」

「じいさん調子はどうや?」

「わし寝るんや」

「じいさんジュース持って来たぞ」

「ええ。いらん」

「桃のジュースやぞ」

「桃!飲む!」

すくっと起きてベッドに腰かけた。
なんてげんきんな。
キャップを開けて手渡すと

「おお、美味い!」

まだ飲んでないやん…。

ふと隣のベッドを見ると空だった。
マットレスもない。

「あれ?隣の方は?」

ス「あぁ~お亡くなりになったんです」

まさかとは思ったがやっぱりか。
けど木曜日は普通に元気そうだったのに。
いつも無表情でちょっと怖そうな方だったがゆうくんを見て「可愛いのぉ」と表情が緩んだのが思い出される。
ほとんどかかわったこともないのになんだか淋しい…。

茂造さんがジュースを飲み終えたので帰ろうかと思ったら

「まだおれや。急いで帰らんでもええやないか」

と言い出した。
こんなことを言うのは初めてだ。
なので少しお付き合いすることにした。
茂造さんは先週家に帰って来た時のように喋り続けた。
相変わらず昔のことばかりだ。
父の為五郎のことや田んぼのこと兄弟や親せきの話を何度も繰り返す。
そして「わしいつ家に帰れるかのぉ?」といった。
かつおさんが慌てて「家に戻ってどうするんや。食べる事やって出来んやろ。おかんもおらんのぞ」と言うと「わし、自分でするわ。体やって動くのに出来るわ」と腕を振り回して見せる。

「先生に家に帰らせてくれって言うたら家に帰ったら死ぬぞって言われたんや」

「そうや。その通りや」

先生ナイス!
かつおさんは心底ほっとした顔をしている。

「ここにおったらええが」

「隣の人は昨日までそこにおったのに、おらんようになったんや。家に戻ったんやろのぉ。ええのぉ」

家に無言の帰宅をしたんやで。
ええことないやろ。
茂造さんは亡くなったことを理解していないようだ。
けれど何か感じることがあったのだろう。
午前中は綿子さんの見舞いに山田病院へ行くと騒ぎ、今は「まだおってくれ」とわたし達を引き留め喋り続けている。
なにか普段と違う。
そして

「会いに来てくれてありがとなぁ。来てくれるんはあんたらだけや。ありがとうございます」

と言い出した。
大丈夫か?
茂造さんも死期が近いんじゃないかと心配になるじゃないか。

茂造さん、できるだけ長生きしたいんでしょ。
ならここでスタッフさんの言う事を聞いてのんびり暮らすのがいいと思うで。
また時々家に連れて帰るからそれで我慢してください。
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昨日の続き

そして話題は綿子さんのボケっぷりに移っていった。
かつおさんが「何回ケガをしても養生や用心が出来んのや。去年はデイサービスに行くようになってちょっとマシになったけど、一昨年は年間300日くらい入院しとったんや」と言うとかっちゃんもゆきちゃんも驚いていた。

「普通の人やったらまた転んだらイカンと思うてやめとくやろ。けどばあさんはそれが出来んのや。思いついたらやらな気が済まんのや。それでケガしてはわしに病院に連れて行けとか言うやろ。ほんま、ばあさんのせいで何日会社休んだことやら。こないだやって買わなイカン物やないのにビッグまで歩いて行ってこけて、それで歩けんようになったんや。それで何かに掴まらんと歩けんくせに畑へ行くんや。ビックリやろ!もう限界や。」

かっ・ゆ「かつおも大変やったんやなぁ」

「米さんはそんなこと無かったんやろ?」

かっ「お母さんもじっと出来ん人やったから、しょっちゅう、うちに自転車で来よったんや。(かっちゃんちは米さんちから自転車で5分くらい)それで帰りに逆の方向いて行こうとするから慌ててそっちと違うでって言うたら、ちょっと遠回りして帰ろうと思うたんやってさらっと口から出まかせを言うんや」

「そうや!うちのばあさんもそれなんや!すぐ話し合わしてさら~っとウソを言うんや。だからあんまり長いこと一緒に居らん人はボケとるって気が付かんのや!」

ゆ「あれはウソと違うんや。ホンマに本人はそう思うとるんや」

「えっ?そうなん?」

ゆ「そうやで。だから全然悪気はないんや。その分困るけどな」

「はぁ~」

かっ「それでそのうち買い物に行ったら帰り道が分からんようになってな。ビッグに行って、帰りに逆方向に行ってしもたらしいんや。そしたら海に出たんやと。それでこりゃ違うわ、反対向いて走ったら帰られるやろうと思うて自転車こいどったら戻れたんやって言うてな。ゾッとしたんや」

本当に恐ろしい。
そのまま迷子になったら近所の人が総出で探し回ることになっていただろう。
それにその事を得意そうに話している時点でかなりヤバいじゃないか。
そんなことがあり光三さんがこのままだと近所に迷惑をかけるからと入所させることを決めたそうだ。

「やっぱり動けるボケが一番厄介やんな!」

かっ・ゆ「そうやがな。帰り道が分からんようになったら困るんやから家で居りなよって言うてもじっとしとけんでな」

「ほんま一緒や!ばあさんはまだ家が分からんことはないけど、じっとせえって言うても言う事聞かんし、パジャマでウロウロして恥ずかしいんや」

「いろんなことが面倒くさいんやろな。炊事や掃除は面倒くさい。着替えるのも面倒くさい。けど畑に行くのは好きなんや」

「パジャマで畑に行くんやで。それでドロドロのままベッドで寝るんや」

かっ「そういえば前にここに来たとき、上は普通の服やったけど下はパジャマやったわ」

「そやろ。そんなんも恥ずかしいと思わんようになるんやなぁ」

どんどん綿子さんの悪口が出てくる。

「じいさんが入所して居らんようになって、もっと酷くなってきたわ。家で居ったら好きなもんを好きなだけ食べてぶくぶく太って」

ゆ「ええっ!あの年で!すごいなあ」

「食欲は旺盛なんや。一時は毎晩ビールも飲んどったし。太り過ぎを指摘されてしばらくは止めとったけど、まただんだん復活してきとったし」

かっ「綿ちゃんビール飲むん?」

「飲める口なんや。じいさんが居った時はそこまで飲んでなかったんやけどな。居らんようになったら我慢することもないんやろ」

かっ「お母さんも食欲は落ちんのや。よう食べるんで」

「数くんが言うとったけど胃腸が丈夫な人は長生きするんやって」

「こりゃあ二人ともまだまだ死にそうにないな」

かっ・ゆ「そうや、まだまだ生きるで~」

「うわ~こわ~」

「ところで光三さんはどうなん?」

「一時はしょっちゅう電話がかかって来とったけど、ぱったりかかってこんようになったんやけど?」

かっ「そやろ~。しょっちゅう電話かけて来とったやろ~。でもやっと慣れて落ち着いたみたいで、かけてこんようになったんや。ほんま一時は電話恐怖症になったわ~。時間とか関係なくかけてきて、夜中の3時とかに電話が鳴ったりして困っとったんや。電話の音がしたら動悸がするようになっとったんや」

「うわ~分かるわ~。ばあさんは電話かけんと直接うちに来るんや。大した用でもないのに。ザッザッって足音が聞こえてきただけで心臓がキューってなっとったんや」

かっ「そうや。私もや!」

ゆ「今は落ち着いて元気にやっとるわ」

「それは良かった」

「おじさんはナンボになるんかな?」

ゆ「96や」

「うわ~すごいなぁ」

「じいさんもそこまで生きそうやなぁ。こわ~」

ゆ「かつおもまだまだ親の世話から逃れられんな」

「お互いな」

とにかく茂造さんの家系も綿子さんの家系もかなり丈夫な遺伝子を持っているようだ。
光三さん以外みんなボケてはいるが胃腸が丈夫で食欲は全然落ちていない。
まだまだ長生きしそうだ。
嬉しいような、恐ろしいような。
それにしてもこの3人(かつおさん、かっちゃん、ゆきちゃん)は、そのハイブリッドなのでもっと最強では?
末恐ろしい…。

続く
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